3×3キューブのエッジコントロールについてまとめます。
記事を作った動機はエッジコントロールに使用する種々手順の自分用備忘録を作っておきたかったというところにあるので、メインに当たる内容は記事後半の発展編の部分ですが、エッジコントロール初学の方が読んでもわかるよう、入門的な事柄から記載していきます。
目次
- エッジコントロールとは?
- 基礎知識:LLエッジの向き(EO)について
- 入門編:スレッジハンマーによるエッジコントロール
- 発展編:その他のエッジコントロール手順
エッジコントロールとは?
エッジコントロールとは、「F2Lのソルブの最中にLLのエッジキューブの向きを意図的に操作(コントロール)する技術」のことです。
F2Lのことだけを考えてF2Lを解くと、その後に出たOLLの回しやすさ/回しにくさに毎度一喜一憂することになりますが、これを完全に運任せにせずにある程度回しやすいOLLが出るようにF2Lでの使用手順・スロットインの仕方を工夫しようというのがエッジコントロールの発想です。
広くはF2L#1~#4の最中に行うLLエッジの向き操作全般を指してエッジコントロールと呼びますが、スピードキュービングでの実用上はlast slotのソルブ時にLLエッジの向き操作を行うことがほとんどです(少なくとも私レベル(official avg. 11.89)のソルブでは。)。この記事でもlast slotでのエッジコントロールについてのみ扱います。
エッジコントロールの使用が特に有効な場面は以下の2つです。
- ドットOLL(エッジ全反転OLL)を回避する。
- 十字OLLが出るようにする。
上記1,2はともに、OLLを全て覚えて終わっていない人にとって有効であるのはもちろん、OLLを57種類全て覚えている人にとっても十分有効です。それは、ドットOLLは回しにくいものが多く、また十字OLLは回しやすいものが多いからです。
まだOLLを全て覚え終わっていない方がエッジコントロールを習得したとしても後々捨てる技術になることはないので、sub ~30くらいの実力の方がOLLの手順暗記と並行してエッジコントロールを習得するのは十分アリな選択だと思います(特にこの記事の入門編で扱っているくらいの内容は。)。
基礎知識:LLエッジの向き(EO)について
LLエッジのEOについては
plusさんの記事などで既に解説されていますが、この記事でも概要を述べておきます。
ルービックキューブのパーツには"位置"と"向き"の2つの要素があります。各LLエッジパーツの向き(edge orientation、以下 EO)の"正しい/正しくない"を以下のように定めます。
- LLエッジパーツが上から1段目にあるとき
- U面色がU面にあれば、そのパーツのEOは"正しい"
- U面色がU面になければ、そのパーツのEOは"正しくない(反転している)"
- LLエッジパーツが上から2段目にあるとき
- U面色がF面orB面にあれば、そのパーツのEOは"正しい"
- U面色がR面orL面にあれば、そのパーツのEOは"正しくない(反転している)"
字面だけから読み取るよりも以下の図を見てもらったほうが早いでしょう。
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LLエッジEOの"正しい/正しくない"の例(青センターがF面)
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そして、LLエッジのEOには以下のような特徴があります。
- U,R,L面の回転では、LLエッジのEOは変わらない。
- F,B面の±90°回転に奇数回巻き込まれると、そのLLエッジのEOが変わる。
- LLエッジが上から1段目にあるとき、y持ち替えではEOは変わらない。
- LLエッジが上から2段目にあるとき、yの±90°持ち替えをするとEOが変わる。
上にあげた4つの特徴のうち、特徴1.がエッジコントロールの発想の根幹に関わっています。持ち替え無しの基本的なF2LはR(L)面とU面しか回さないので、F2Lが終わったあとにエッジが何個反転しているOLLになるかはlast slotのF2L手順を回す前から予想できます。
ここで、主に特徴2.(+ 稀に特徴4.)を利用してlast slotのF2Lの入れ方を工夫し、少しでも都合の良いOLLが出るようにLLエッジのEOを操作しようというのがエッジコントロールのねらいです。
入門編:スレッジハンマーによるエッジコントロール
エッジコントロールの最も基本的なもの(なおかつ最も効果的で使用頻度の高いもの)は、F2L#4を"I化"("IT化"のうち"I"のパターンに帰着するもの)した後、それをスレッジハンマーと呼ばれる手順(R' F R F')でスロットインするものです。
スレッジハンマーによるスロットインが有効なのは次に挙げる2つの場合です。
- U面にある3つのLLエッジが全て反転しているとき
この場合、普通にU R U' R'とスロットインするとドットOLLが出現しますが、スレッジハンマーでスロットインすることでこれを回避し、エッジがL型のOLLにすることができます。
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ドットOLLを回避するエッジコントロール |
- ULとUBにあるLLエッジの向きが正しく、UFにあるLLエッジの向きが反転しているとき
要するに、U面色のエッジがU面に"9時"の形を作っている場合です。9時の形とF2Lペアの位置関係にも注意してください。この場合、普通にU R U' R'とスロットインするとI型のOLLが出現しますが、スレッジハンマーでスロットインすると十字型のOLLにすることができます。
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十字OLLを作るエッジコントロール |
LLエッジのEOが上の1, 2以外の関係になっている場合は、普通に U R U' R' と回してスロットインするのが私としてはおすすめです。
他のEOのパターンでもOLLを十字にする手順があるにはあります(いわゆるVHLS)が、手数が長いため回しやすいOLLが出るメリットと相殺してしまい、微妙なところです。
エッジコントロールの手順を適用するかどうかを判断する際に留意しておいてほしいのは、スロットイン前に last slot に入っているLLエッジの向きは見る必要がないという点です。
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エッジコントロールの判断時に確認すべきパーツ |
スロットイン前にU面に出ている3つのLLエッジのEO(=U面に黄色エッジが作っている模様)だけで、エッジコントロール手順の適用可否を判断できます。
※その理由は、ルービックキューブのエッジパーツの向きは12個中11個までしか独立に決められないためです。①クロスエッジ4つが揃っている,②他の3つのF2Lが既にスロットインされている,③最後の1つのF2Lが既にU R U' R'でそろう状態にセットアップされている,④U面に出ている3つのLLエッジのEOの情報が手に入っている、という条件下では、4+3+1+3=11個のエッジのEOの情報が既に手に入っていることになるので、残り1つのエッジの向きはわざわざ確認する必要がないというわけです。
また、エッジコントロールの判断はF2LをI化した後でないと不可能なのかというと決してそうではなく、F2L#4の手順を回し始める前から判断できる場合も多くあります。
例を2つほど見てみましょう。
- 例1 (スクランブル F2 D2 L' F2 L D2 F2 z2)
F2L#4のIT化は未完の状態です。しかし、U面に出ている3つのLLエッジの向きがすべて正しいので、このまま普通にIT化してスロットインすれば十字のOLLが出現する(すなわち、エッジコントロールとしてスレッジハンマーを使ったスロットインをする必要はない)ことがこの時点でわかります。
したがって、この場合は普通にU' R U2 R' U2 R U' R' とスロットインすればよいです。
- 例2(スクランブル L D L R' U B U' L2 R z2)
例1と同様にF2L#4のIT化は未完の状態ですが、U面にある3つのLLエッジがすべて反転しているので、このまま基本手順でスロットインするとドットOLLが出現することがわかります。
ドットOLLを避けるため、この場合はスレッジハンマーを利用したエッジコントロールを使ってU R U' R' U' R U' R'2 F R F' とスロットインするとよいです。
ここまではF2L#4がU R U' R'でスロットインできる形になった場合について扱ってきましたが、左右が反転した形であるU' L' U Lでスロットインできる形でも同様にエッジコントロールができます。
左手のスレッジハンマー手順はL F' L' Fですが、利き手と逆で回しにくいと感じるなら少し角度を変えてRw U' Rw' Fというように回すと多少回しやすいかもしれません。
また、I型のF2Lではこのように簡単にエッジコントロールができるのであれば、T型の場合はどうなのかと思う方もいるかもしれません。
しかし残念ながら、T型の場合についてはあまり良いエッジコントロールの方法は知られていません。
例えば下表内の図の状態からドットOLLを回避しに行くのであれば、一例として下表中に記載されている手順を回す方法が知られていますが、手数がかさむためドットOLLを回避するメリットが薄れてしまい微妙です。
| R U' R' U2 R' F R F'
※あまりお勧めしない |
F2L#4がT型になった場合は、エッジコントロールのことは考えずに素直にスロットインするのがよいと思います。
(※ 2024年4月追記)
上の図から S' R U R' S というドット回避手順があり、有効活用しているキューバーもいるようです。
発展編:その他のエッジコントロール手順
I型からのスレッジハンマー適用ではない、発展的なエッジコントロールを列挙していきます。私自身の覚書としての意味合いが強いです。
F2L#4のエッジパーツとコーナーパーツが両方埋没しているパターンです。
この場合はスロットとU面のLLエッジの位置関係を好きに変えられるので、正味のLLエッジ状態のパターン数が少なく、手順暗記のコスパが良いです。
| R U2 R' U R U2 R' U y' R' U' R | | F R' F' R U' R U'2 R' U F' U' F |
| R U' R' U' R U' R' U y' R' U' R | | Rw U' Rw' U2 Rw U Rw' R U R' |
| R U R' U' R U' R' U2 y' R' U' R y | | R U' R' Rw U' Rw' U2 Rw U Rw' |
| R U' R' U' R U R' U R' F R F' | | y L' U L U' L' U2 L2 F' L' F
U2 F R' F' R2 U2 R' U' R U R' |
| R U' R' U R U2 R2' F R F' | | y L' U L U L' U' L U' L F' L' F |
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※他に良い手順があれば教えてください。
H1型, H2型は、U面にあるLLエッジのうち3つの向きが正しい場合に手順を使い分けて十字OLLを作ることができます。
| y U L' U' L y' U' R U R' | | U' R U R' y U L' U' L |
| y U2 L' U' L y' U R U' R' | | U2 R U R' y U' L' U L |
| y U2 L' U' L y' R' F R F' | | U2 R U R' y L F' L' F |
| y U2 L' U L y' U R U R' | | U2 R U' R' y U' L' U' L |
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本記事の内容はひとまず以上です。発展編の内容は今後いい手順を見つけたら随時加筆・改訂していくかもしれません。